地下鉄の車両保守

昭和32年の地下鉄開業以来、市民や利用者の皆様の目には触れないところでも、地下鉄の安全や快適性を守るため、様々な努力を重ねています。電車工場には藤が丘工場、名港工場、日進工場があり、担当する車両の点検整備、修理、改造などを行っています。
車両の設計及び保守は、法令の定めるもののほか、実施基準(車両)に基づき実施しています。
地下鉄の車両は搭載機器により、車両状況の管理や、検査作業をコンピュータで行っています。
それに併せて各種試験装置も、高精度化・高効率化の時代要請に応えています。日々行われる車両の点検では、作業員による打音検査、触手検査、目視検査といった人の感覚による検査を実施し、機械では感知できない繊細な保守点検をしています。
また、日進工場の敷地内には名古屋市市電・地下鉄保存館(愛称:レトロでんしゃ館)が併設されていて、週末は家族連れでいつも賑わっています。名古屋市市電・地下鉄保存館についての詳細は、レトロでんしゃ館をご覧ください。
東山線の車両は藤が丘工場で、名城線・名港線の車両は名港工場で、鶴舞線・桜通線の車両は日進工場で、重要部・全般検査、月検査、列車検査、臨時検査や改造工事を行っています。
また、名城線・名港線の車両の列車検査は大幸車庫で、桜通線の車両の列車検査は徳重車庫にて行っています。
上飯田線の車両は、名古屋鉄道(株)へ整備を委託しており、列車検査・月検査は名鉄・犬山検査場で行っており、重要部・全般検査、改造工事は名鉄・舞木検査場で行っています。

列車検査

お客さまにご乗車いただいている電車は6日(上飯田線の車両は7日)以内に一度、列車検査を行います。
列車検査では、専用のハンマーを使用して、検査する部分を軽くたたき、その打音でボルトのゆるみなどの状態を判断する検査方法(打音検査)、車両に触れて、異常な熱やガタつきなどを判断する検査方法(触手検査)、目視、異臭の有無など車両を人間の五感により点検します。
また、乗務員の操作する機器や、乗降用扉については、実際に動かしてみて、正常に動作するのかを確認しています。

月検査

電車は3月を超えない期間に一度、月検査を行います。
月検査では電車の屋根上機器や床下機器など、主要な機器の状態及び機能について点検を行い、必要に応じて摩耗した部品や潤滑油の交換を行います。
また、主要機器の点検、交換作業完了後には車上検査装置を使用し、電車の制御装置、補助電源装置、ブレーキ装置など各部の総合的な機能を確認する総合試験を行っています。

総合試験の写真

重要部検査・全般検査

電車は4年を超えない期間又は走行距離が60万キロメートルを超えない期間のいずれか短い期間ごとに、重要部検査を行い、8年を超えない期間ごとに全般検査を行っています。
重要部検査では電車の主要部分(台車装置、制御装置、ブレーキ装置、車体や戸閉機等)について分解して検査を実施しています。
全般検査は電車の全般にわたってオーバーホールを行って検査を実施しています。

車両の気吹き・分離作業

車両の気吹き作業

定期検査のため車両が入場すると、4年間走行して付着したホコリを圧縮空気で吹き飛ばして汚れを落とします。

気吹き作業写真

車両の分離作業

気吹き作業を行ったあと、電車を1両ずつに分け、30トンクレーンで車体を吊り上げて台車と車体に分離します。
吊り上げた車体は所定の作業場まで移動させ、主要機器の整備を行います。

電車車両の分離作業写真

台車分解検査・車軸の検査

台車分解検査

台車からモータを取外し、さらに台車枠と車軸に分解します。
傷などの点検、洗浄、ベアリングの取替や小さくなった車輪の取替を行います。

モータ取外し写真

台車枠・車軸の検査

分解した台車枠は磁粉探傷器を使用して、台車枠から取外した車軸は超音波探傷器を使用して目に見えない傷の有無を調べます。

車軸の検査写真

車体の検査・戸閉機の分解検査

車体の検査

車両間を繋いでいる連結器の分解検査をはじめ、座席やドア・幌・床などに傷や汚れがないか検査しています。

車体の検査写真

戸閉機の分解検査

ドアの開け閉めを行う装置(戸閉機)の検査・修理をします。
部品の交換や開閉動作の調整を行います。

戸閉機の分解検査写真

制御装置の分解検査

電車を動かしたり止めたりするための指令を与える機械を分解し、部品の取替や調整を行います。

制御装置の検査写真

ブレーキ装置の分解検査

電車を止めるためのブレーキ装置に使われている様々な部品を点検し、必要に応じて交換や調整を行います。

ブレーキ装置の検査写真

組成

それぞれの部品や装置の点検作業が終了すると組成作業を行います。
台車に車体をのせ、空気配管や電気連結線などを繋ぎ、電車として完成させます。

総合検査

組成の終わった電車に電源を入れ、各装置が間違いなく接続されているか、動作に間違いが無いかなど、総合的に試験を行います。
人間の目、耳や手で確認する試験や、車上検査装置を使用し、各部の総合的な機能を自動で検査する試験など多岐にわたります。

試運転

総合検査が終了した電車を実際に走行させ、加速度・減速度が定められた値に合っているか、異常な音や発熱がないか確認を行います。

出場

各種試験に合格すると、営業運転に使用されます。

車輪削正

電車の車輪は長年の使用により形がゆがんだり、キズがついたりします。
工場では車輪削正装置を使って車輪をきれいな形に削り直します。
その時に出る鉄くずは業者に引き取ってもらい、再利用を図っています。

車輪削正の写真

車両清掃

車両自動洗浄機を使い、数日に一度、車体外板を丸洗いします。
その他、人の手で清掃する作業もあります。

カーワッシャーの写真